研究概要 |
平成22年度は、前年度に引き続き中国、米国、日本を中心に国際産業連関表の推計を行うとともに、中国人民元の均衡為替レートの推計を行った。また、アジア諸国の為替レート制度と通貨経済統合に関する研究も進め、横浜国立大学とオーストラリアのEdith Cowan Universityが共同開催した国際コンファレンスで研究成果を発表した。本研究の意義は2つある。一つは、実体経済の要因を考慮して均衡為替レートを推計するために、国際産業連関表を推計した点にある。研究代表者の佐藤と研究分担者のShresthaは共同で毎年の国際産業連関表を推定する手法を考案した。22年度は考案した手法に基づいて推計した1990年代初めからの時系列の国際産業連関表のチェックを重ねた。この推計作業は他に例を見ない先駆的な研究成果であり、今後、国際経済学の他の分野にも応用することが可能である。次に、Yoshikawa(1990,AER)の手法に基づいて、中国人民元の対米ドル名目均衡為替レートを推計した。その研究成果は経済産業研究所のDiscussion Paperとして公表された。同論文では、中国人民元が2000年時点の水準から2009年にかけて46パーセント切り上がる必要があることを報告している。興味深いことに、推計結果が示す人民元均衡為替レートの大幅な切り上げは、中国が対米貿易黒字を急激に拡大させ、その結果驚異的なペースで外貨準備を蓄積していった時期とぴったりと符合している。横浜国立大学とEdith Cowan Universityが共同開催した国際コンファレンスでの発表論文の中から優れたものが選ばれて、英文の国際査読付学術雑誌The World Economyの特集号として出版される予定となっている。23年度中に最終稿を提出し、査読を受ける予定である。
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