平成23年度は、国際産業連関表の推計作業を大幅に進展させ、日本、中国、韓国、米国を含む10か国を内生国として、2005年から2010年まで毎年の国際産業連関表を推計した。このデータに基づいて、米国などのアジア域外からのショックが域内各国にどのような波及効果をもたらしているかを実証的に分析した。本研究の貢献と意義として次の2つがあげられる。第1に、国際産業連関表は各国間の実体経済のリンケージを詳細に示す非常に優れたデータである。これまで広く利用されてきたのはアジア経済研究所が公表しているアジア国際産業連関表であるが、現時点で公表されている最新のデータは2000年の国際産業連関表である。しかし、中国経済が急速に発展したのは2000年代半ばからであり、2000年の国際産業連関表では2000年代に進んだアジアのダイナミックな発展と構造変化をとらえることは困難である。本研究は2005年から2010年までの毎年の国際産業連関表を推計することに成功しており、国際経済学の様々な分野に応用することが可能な、他に例を見ない先駆的な研究成果である。第2に、新しい国際産業連関表を用いて推計した中国人民元の均衡為替レートの研究成果を英文の国際査読付学術雑誌The World Economyに掲載した。もう一つの研究として、新しい国際産業連関表を用いて、アジア域内諸国間のショックの波及メカニズムを推計した。アジアにおいて地域的な為替・通貨システムが形成されるための条件を満たしているか否かを分析しており、ロンドンとウィーンで開催された国際シンポジウムでこの研究成果の報告を行った。
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