本研究の目的は、軽機械(時計、ミシン、カメラ、双眼鏡など)工業の比較経済史・経営史である。本格的な家電・自動車輸出が登場するまで、日本では軽機械工業は戦前以来の雑貨工業の伝統を色濃く引き継ぎながら、外貨獲得力、労働集約的性格から雇用問題にも対応しながら、輸出産業として大きく注目された。日本製軽機械の輸出市場は主としてアメリカ市場であり、アメリカ市場での厳しい競争に勝ち抜いた日本製品は続いてヨーロッパ市場に参入し、光学機器の本場であるドイツ市場でも一定の地歩を占めるまでに成長した。軽機械工業を対象として、20世紀における産業ダイナミズムの実態を考察することが、本研究の最大の狙いである。 計画2年度の今年度は、国立国会図書館、経済産業省図書室、機械振興協会図書室、日本カメラ博物館附属図書館、靖国偕行文庫などに所蔵されている軽機械関連資料の収集に努めた。 具体的には戦後の軽機械工業発展の前提ともなる戦時期の共同研究の実態、医療機器、光学機械などに関するヨーロッパ諸国から日本への技術移転の実態、軽機械工業における産官学連携による共同研究の組織化・推進の意義について検討を重ねた。国立研究所の活動、大学および大学附置研究所の役割、業界団体の活動などについても資料収集、分析を続けた。中小企業が比較的多い軽機械工業における技術開発を支える産官学にまたがるネットワークの実態を、さまざまな角度からさらに究明することが今後の課題である。
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