研究概要 |
飲用地下水の砒素汚染は世界規模の環境問題であり、バングラデシュ、インド西ベンガル、中国、タイ、ベトナム等々で報告されており、バングラデシュだけでも4,000万人以上が汚染地下水を飲用しているといわれている。これまでの研究で、鉄酸化バクテリアと鉄を利用したハイブリッド型砒素除去フィルターを開発したが、今年度は、これまでの研究成果を発展させ、以下を明らかにした。 (1)フィルターを製作する場合の適正な材料と手法 種々の土壌/米糠混合比にて焼成したフィルターの強度とろ過速度を求め、満足できる範囲の最適混合比として、80/20が得られた。次に、金網の必要量を検討し、金属鉄重量を600g、鉄酸化バクテリア5000mgを得た。さらに、砒素除去濃度の予測式として線形モデル式:ΔAs=a・Fe-b・P+c(a、b、cは定数)を考えた。ここで、ΔAs:砒素除去濃度、Fe:原水中2価鉄濃度、P:原水中リン濃度、定数項のcは金網から供給される鉄などによる除去である。 (2)フィルターの適正な維持管理手法 砒素除去装置をバングラデッシュのヒ素に汚染された地域に設置し、その性能を調査した。調査はクルナ市郊外のBagerhat地区にある3つのsubdricstiet、すなわちRupsha、MollahatおよびFakirhatで行なわれ、15基の砒素除去装置が設置された,調査は2009年8月と2010年3月に行い、多くは50μg/Lまで除去できた。手によるフィルターの簡易洗浄だけで、6ヶ月間の砒素除去性能が維持された。また、フィルター製作および設置後の必要な管理内容について、わかりやすい表現で記載した管理マニュアルの素案を作成し、本マニュアルをバングラデシュ農村部での現場試験で用いた。
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