研究概要 |
本研究の目的は,室内実験や数理モデルによる数値シミュレーションを通して,ヒ素除去技術を開発することにある.その際,数理モデルは,ゼロ価鉄を透過型浄化壁として使用することで水からヒ素を不動化するメカニズムや,その主要要因を解明するためのツールとして利用される. 本研究の2年目となる今年度は,ゼロ価鉄を使用して水からヒ素を除去する際のメカニズムの詳細に関連して,バッチテストを中心に検討を行い,吸着反応速度の定量化とそのモデル化を行った. まず,五酸化ニヒ素や三酸化二ヒ素の吸着反応速度に対するヒ素濃度の影響を検討した.その結果,五酸化ニヒ素はゼロ価鉄の表面吸着で除去され,一方,三酸化二ヒ素はゼロ価鉄により吸着されるとともに,五酸化ニヒ素に酸化されることを示すとともに,異なる濃度における一次反応モデルの反応速度を定量化した. さらに,これらのバッチ試験の結果や推定したヒ素除去メカニズムを基本に,化学反応の概念モデルを構築し,バッチ試験結果に適用するとともに,溶質輸送モデルとカップリングしてカラム試験結果にも適用した.シミュレーションの結果,ヒ素不動化はゼロ価鉄に強く影響を受けること,五酸化ニヒ素はゼロ価鉄の表面吸着で除去され,一方,三酸化二ヒ素はゼロ価鉄により吸着されるとともに,五酸化ニヒ素に酸化されること,五酸化ニヒ素の吸着速度パラメータは三酸化二ヒ素のそれより大きく,三価鉄の影響を受けること,などが明らかになった.また,開発したモデルは,ゼロ価鉄を透過型浄化壁として使用することによるヒ素除去法の能力予測に使用可能であることも示された.
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