デング熱は、現在のところワクチンもないため東南アジアの広い地域で公衆衛生上の問題となっている。デングウイルスは、DEN1~4の4種類に大別され、それらのエピトープ領域とウイルス型に対する抗体の特異性を解明する事は重要な研究課題である。本計画では、抗体認識の特異性に直接関わる可能性が高いデングウイルスのエンベロープ糖タンパク質(以下、Eタンパク質)の第3ドメイン(以下、E3D;96残基)の構造解析が最近報告されたことに注目し、その変異体解析を行い、抗体認識機構(及び部位)を分子レベルで解明する。 平成22年度では、デングウイルス3型及び4型由来の合計2種類のE3DをpET発現系で発現し、通常の精製法(ニッケルレジン、HPLC)で、高純度に精製した(培地1L当たり30mgの収量)。高純度に精製したE3Dの熱安定性や二次構造含量を、円二色性分光法で調べた結果、βシートとαヘリックスが含まれることと、熱安定性が60℃以上であることを解明した。さらに、3型E3D及び4型E3DのX線結晶構造をそれぞれ、1.6Åと2.3Åの分解能で決定し、座標をPDBに仮登録した。現在、3型E3D及び4型E3Dの抗体認識部位の数残基を互いに入れ替えた変異体を作製している。平成23年度には、3型E3D、4型E3D及びそれらの変異体を用いて、ウイルス型におけるE3Dの熱安定性及び抗体認識部位の構造、揺らぎが抗体結合力に及ぼす影響を詳細に解析する。
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