Diplotaxis muralisの細胞質(mur型細胞質)を持つBrassicaの細胞質雄性不稔性の稔性回復遺伝子を同定するため、mur型細胞質雄性不稔性のブロッコリーと稔性回復遺伝子を持つカイラン(Brassica oleracea var. alboglabra)のF_2集団を用い、両親間で多型を示すDNAマーカーを作成して遺伝子型を分析することにより、昨年度稔性回復遺伝子を第1連鎖群にマッピングした。今年度は、稔性回復遺伝子が含まれる第1連鎖群のゲノム領域のシンテニーを解析し、これまでいくつかの種で稔性回復遺伝子として報告されてきたpentatricopeptide(PPR)モチーフを持つ遺伝子を、その領域に3つ見出すことができた。その遺伝子発現を解析したところ、稔性回復系統と不稔性回復系統で発現量に差が見られたことから、それらが稔性回復遺伝子の候補と考えられた。これらの結果を論文にまとめ、投稿中である。 同研究室内の別の学生が行っているB.oleraceaの耐病性のQTL解析のためにSNPマーカー作成を協力し、これら2つの研究で得られた連鎖地図を統合することによって、320マーカーからなるB.oleraceaの連鎖地図を構築した。 カイランの白花とブロッコリーの黄花は1遺伝子によって決定されるが、白花は黄花に対し優性である。この遺伝子も第1連鎖群にあり、稔性回復遺伝子とは25cM離れていることを見出した。色素合成に関わる酵素の遺伝子を分析したが、カイランとブロッコリーで変異がない、あるいはDNA塩基配列に変異があっても、マッピングした位置に座乗しないなどのため、この特性に関わる遺伝子の候補は見出されなかった。
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