カドミウムや鉛などの有害重金属以外でも、銅などの重金属は、鉄及び亜鉛などと同様に必須元素であるが過剰な場合には毒性を示す。これは、銅ホメオスタシスなどと呼ばれる機構で毒性が生じないように制御されているが、これは複数の遺伝子産物(物質輸送に関わるトランスポーターや、金属結合タンパク質など)が関与する機構で、精密に制御されている。本研究では、これを明らかにするために、ゲノム全体の遺伝子発現状態を解析する手法であるマイクロアレイを用いて、銅、カドミウム、塩化ナトリウム、アルミニウム処理を比較して、特に重金属障害で生じる機構に関して解析を加えた。シロイヌナズナの根の生育を100%及び50%阻害する条件で、24時間処理した後に、誘導される遺伝子に関して比較した。その結果、銅、カドミウム及びアルミニウムでは、処理によらず類似の遺伝子発現が増加するのに対して、塩化ナトリウム処理では異なる遺伝子群が増加することが確認された。これは、遺伝子発現による制御(耐性遺伝子や適応遺伝子の発現)による制御が、重金属耐性では一般的であるのに対して、塩化ナトリウムへの適応でタンパク質の活性化調節などの他の機構で制御されていることを意味する結果であった。さらに重金属耐性に関わる遺伝子の内、誘導レベルを耐性及び感受性系統間で比較すると、感受性系統で発現が高いストレス応答遺伝子と、耐性系統との間に明確な差が認められないストレス耐性に関わると考えられる遺伝子に区別できることが明らかとなった。
|