研究概要 |
わが国では近年,気温の上昇ばかりでなく,周辺海域における海水温の上昇が観測されており,地球温暖化が現実のものとなりつつある。水産分野で早急に対処しなければならないのは,地球温暖化による漁業生産への影響評価である。本研究では,1)沖縄産亜熱帯性魚類に寄生するカイアシ類の分類学・生態学的特性を明らかにするとともに,2)地球温暖化に伴う彼らの本土侵入を予測し,わが国の水産養殖業における病害虫としての彼らの影響を評価することを目的とする。本年度は,現地での標本採集に加えて,文献に基づいて既往知見の整理・解析を行った。 (1)沖縄県沿岸・近海で漁獲された海水魚を入手し,寄生虫学的検査を行った。これまでにフエダイ科,ハタ科,キントキダイ科,イサキ科などに寄生性カイアシ類を見出し,形態・分類学的研究用の標本とした。これら標本にはウオジラミ科Caligidaeのやハチェキア科Hatschekiidaeの種が多く含まれていた。 (2)沖縄県を中心とするわが国の亜熱帯域における魚類寄生虫に関する過去の文献を整理した。その結果,海域から報告されている寄生性カイアシ類は僅か数種であり,亜熱帯水域における種多様性を考慮すると,まだ未報告の種が多数生息すると推測きれた。
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