平成21年度(11月~3月)、18世紀末までの主な朝鮮資料、すなわち『伊路波』、『捷解新語』の諸本、『倭語類解』の全文データベースと検索プログラムとの作成が本研究の中心となっていた。データベースの完成は平成22年度以内と期待されるが、現在の形でも既に利用可能である。電子化した資料をもとに、表記・音韻・音声面での調査をしはじめ、最初の結果として近い内に、いわゆる並書表記の新解釈を試み学会で発表する予定である。 また、日本語に対するハングル音注の解釈のために、朝鮮語側の音声的な事実を明らかにするのに大きく寄与して計いる外国資料の調査を続け、その結果の一部を論文の形でまとめた。まず、ドイツ・ボーフム大学シーボルト資料室所蔵の手稿を契機に、上記『倭語類解』のみならず朝鮮語の仮名書き資料とも密接な関係にあるPh.Fr.von Sieboldの朝鮮語研究を論じたものであるが、手稿所蔵機関の雑誌に掲載された。また、平成22年度始めに投稿する予定のものとして、16世紀末から18世紀末までの西洋人の朝鮮語に対する知識と研究の歴史を対象としたものもある。この中では、資料の概観と整理に加えて、現在まで未解決のままで残されていたいくつかの問題が解明できた。 最後に、Sieboldなどによる『倭語類解』の利用よりも早く西洋人学者が朝鮮資料を活かした痕跡が19世紀の初年成立手稿で確認できた。『捷解新語』の重刊本・文釈本の附録として知られているものが独立した書物としても現存することのみならず、1790年代頃既にヨーロッパへ伝わったことも明らかになった。西洋人によるハングル研究の最も早い例の一つでもあるこの手稿についての詳細な報告は平成22年度以内発表する予定である。
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