本課題では、インドおよびインドネシアで1990年代から連続運用されている流星レーダーならびに中波帯(MF)レーダーにより、地球大気の中間圏・熱圏下部(高度80-100km)で観測された風速データを解析し、特に大気潮汐波と大気重力波の変動特性を研究した。 まず、インドネシアの西スマトラのKotoTabangの流星レーダー、西ジャワのPameungpeuk MFレーダー、および南インドのTirunelveliのMFレーダーのデータを入手し、データ質を検討したうえで、2001年以降のデータも用いて長期変動の解析を行った。風速1時間値について調和解析を行い、1日、半日および3倍高調波である8時間周期の潮汐波を詳しく調べたところ、1年および半年周期の季節変動が基本的であることが分かった。さらに、周期1-8時間に連続スペクトルとして現れる大気重力波による風速変動の分散値(運動エネルギーに相当)の季節変化特性も調べた。 8時間潮汐の振幅について、従来の中緯度での研究では1年周期の季節変動が特徴的であったが、赤道域ではピーク時期がずれており、かつ年に2回振幅が増大する傾向があった。観測結果を、全球数値モデルで再現された8時間潮汐と比較したところ、波動振幅は同等だが、季節変動には差異があることが分かった。なお、8時間潮汐の振幅が急激に大きくなる場合があったが、同時期に大気重力波の活動も増大しており、相互作用が示唆された。 今後、さらにアジア域に分布する多くのレーダーのデータを収集し、統計解析を進めることで、大気波動の時間・空間変動特性を解明することが重要である。
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