研究概要 |
本研究では、アジア太平洋域の大気エアロゾルに着目しそこに含まれる有機物の組成の解析を行うことにより、有機物の起源や変質の情報を入手することを目的とした。具体的には、主成分有機化合物である、低分子モノカルボン酸と関連有機物をガスクロマトグラフィー(GC),GC/質量分析計にて測定し、分布の特徴から起源・変質の情報を解析した。更に、我々の研究室で開発した吸湿特性タンデムDMA装置をもちいてエアロゾルの吸湿成長特性と化学組成との関係を明らかにし(Mochida and Kawamura, 2003; Aggarwal, Mochida and Kawamura, 2008)、その研究を東アジアの下流域に位置する西部北太平洋で採取されたエアロゾルに広げることを目指した。アジア大陸で採取したエアロゾル試料を分析することにより、重要なソース域での有機物汚染の実態を明らかにしその西部北太平洋への広がりを評価した。 また、ウランバートルの冬期に採取した大気エアロゾル試料の吸湿特性を解析した。エアロゾルから水抽出画分を分離し、ネブライザーを用いて微粒子を発生させた。タンデムDNA装置を使って、相対湿度5%から95%の範囲でスキャンして微粒子の吸湿成長を測定した。RH20-40%において、微粒子の粒径(mobility diameter)が5-17%減少した。この結果は、微粒子が非対称であり、水を吸収することにより粒径が小さくなったことを意味している。RH85%における微粒子の吸湿成長率は、1.09-1.38(平均1.23)という値が得られた。この値は、硫酸アンモニウム(1.56)よりは小さいが、バイオマス燃焼生成物のそれに近いものである。冬のウランバートルでは、木質の燃焼が重要な暖房手段であり、エアロゾルの吸湿特性を支配する要因であることがわかった。
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