3つのピリジル基を有する三角形型有機リガンドとチオシアン酸コバルトとの錯形成により、新規な細孔性錯体を合成することに成功した。この錯体は、直径約3nmと1nmの1次元チャネルを有することがX線結晶構造解析から明らかとなった。また、この細孔性錯体内の空隙率は73%にも達することが分かった、直径が3nmの細孔には非常に大きなゲスト分子の包接が期待できるため、様々なゲストの包接を試みた。まず、フラーレンC60やポルフィリンの飽和トルエン溶液に錯体結晶を浸したところ、これら1nm程度の大きさを持つゲストが細孔内に容易に取り込まれることが吸収スペクトルや抽出実験から分かった。興味深いことに、フラーレンとポルフィリンの混合溶液からは、およそ1:1の比率で二種類のゲストが混合包接させることがHPLCによる分析から分かった。同様な手法を用いて錯体結晶を単層カーボンナノチューブ(SWCN)の懸濁液に浸したところ、僅かではあるがナノチューブのとりこみが進行し、そのゲストの存在は、抽出後の原子間力顕微鏡を用いた測定によっても確認できた。これにより、ナノチューブの直径による分取の可能性が見出せた。 さらにこの錯体のゲスト包接能を向上させるべく、有機配位子の官能基化も行った。エチレングリコール鎖やアルキル鎖を配位子に導入することで、細孔内の疎水性/親水性をコントロールすることも検討した。
|