研究概要 |
本年度は,新規ポリイオン液体モノマー被覆シリカを合成・評価を中心に行った。臭化ビニルイミダゾリルイオン液体を合成し,これをモノマーとして用い,ラジカル重合反応によってシリカ上にイオン液体性分子をグラフト化させグラフトポリマー被覆シリカ粒子の調製を行った。また,アニオン交換反応により,異なる対イオンをもつ粒子の調製を行った。これとは別に,臭化アリルブチルイミダゾリウム([AyBIm]Br)をイオン液体性モノマーとし,メルカプトプロピルシリカ粒子によるラジカル重合反応を実施した。得られたイオン液体修飾シリカ(SiImBr)を固定相とした逆相クロマトグラフィー分析により,多環芳香族炭化水素に対する保持挙動の調査を行った。調査の結果,SiImBrは多環芳香族炭化水素及び両性化合物に対して,π-π及び双極子-イオン間での静電相互作用や,双極子相互作用などいくつかの相互作用に基づく分離挙動を示すことが明らかになった。さらに,長鎖イオン液体モノマーとしてビニルオクタデシルイミダゾリウム([C_<18>VyIm]Br)を合成し,メルカプトプロピルシリカ粒子によるラジカル重合反応を実施した。得られたポリイオン液体修飾シリカ(Sil-PImC_<18>-Br)はメチルオレンジ(MO)を用いて自己集積させた。参照基準物質を用いたクロマトグラムは,Sil-PImC_<18>-MOは非常に高い形状選択性を有するポリマーに似た保持挙動を示し,また,従来クロマトグラフィー分離において困難であるとされているエストラジオール異性体の分離において,Sil-PImC_<18>-MOを固定相として用いたカラムではメタノールを溶離液として3分以内の分離を実現した。 以上,本年度は当初の計画通り,イオン液体モノマーグラフト化シリカを合成し,HPLC固定相を作製,さらに,その分離挙動について検討を行った。
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