研究概要 |
本研究では,キラル分子ゲルの配向構造を利用した精密分子認識システムの構築を目的とし,キラル分子ゲルの合成,基材への固定化,分子認識能の評価を実施している。水中,有機溶媒中で自己組織的に分子会合体(キラル分子ゲル)を形成する二鎖型グルタミン酸誘導体の末端にアルコキシシリル基を導入し,これを多孔質シリカ界面にグラフト化することで目的とする固定層を作製した。分子会合に寄与するグルタミン酸部位とシリカ界面とのスペーサー長の異なる分子を合成し,固定化による分子配向構造への影響と分子認識能への影響について評価した。スペーサー長を長くすることで,アルキル鎖はトランス配座が安定化されることが13C-NMRにより確認された。また,50℃付近でトランス配座からゴーシュ配座への転移を伴う相転移が観察されたことから,長いスペーサーの導入により,グルタミン酸誘導体の配向が促進されたと考えられる。これらのキラル分子ゲルを固定化したシリカ粒子をステンレスカラムに充填し,その分子認識能をHPLCにより評価した結果,芳香族性の化合物に対して,いずれの場合も汎用のオクタデシル化シリカよりも高い選択性を示した。また,グルタミン酸誘導体の配向状態において,汎用カラムでは分離が困難なトコフェロール異性体なども完全分離(ベースライン分離)することができた。今後,立体異性体や光学異性体など生体関連および環境関連の化合物の分離についても検討する計画である。
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