InNの光学的・構造学的・電気的特性とその成長メカニズムについては未だ不明な点が多い。最適な成長条件を見出し、電気的・光学的特性の改善を図るためには緻密で基礎的な研究が必要である。H21年度に開始した本研究では、これまでにおいてまず無極性面InN結晶における偏光フォトルミネッセンス特性を評価した。この現象は、結晶中の格子歪の変化に伴うバンド構造変化の理論的解析によりうまく説明できることを示した。本結果は、窒化物半導体国際会議(ICNS-8、2009年10月、韓国チェジュ島)において論文発表し、Physica State Solidi(a)にもプロシーディングスとして採択されている。次に、In極性InN結晶成長の光反射率その場観察およびRHEEDその場観察によるMBE成長メカニズム解明の検討を進めた。InN成長において重要な過程となる成長表面における2分子層のInアドレイヤーの存在を直接的に示す実験結果を反射率その場観察によって見出し、その吸着・脱離過程も評価できることを示した。これらの成果は、ISPlasma2010(2010年3月、名古屋)において論文発表している。さらに、InNのp型伝導実現のための重要技術であるMgドーピングInNを作製し、サーモパワー法を用いた評価を行った。MgドーピングInN成長時のノンドープInNバッファ層の影響を、サーモパワー評価により得られたSeebeck係数の変化から検討を進めた。
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