本研究では、クリーン半導体量子井戸および量子細線半導体レーザーの作製・加工および評価計測を行い、キャリア間相互作用の効果が構造の次元に応じてどのように強い寄与をするのか検証・解明し、高度な性能予測やデバイス設計に活かせるように、デバイス物理の基礎を確立することを目指している。 今年度は、良質のT型量子細線半導体レーザーの開発を進めるための、効率的な試料の評価法の開発を行った。すなわち、これまでの方法では、結晶成長した試料(4mmx5mmx60μm)をただちにレーザー構造に加工(500μmへき開)した後に、発光・レーザー特性計測を行っていた。しかし、より迅速かつ効率のよい物性計測を行うため、試料を加工する前に試料全体のPL計測評価を行って高品質な領域を選別し、ホルダーから取り外してクリーニングを行って後のプロセスに用いるという、新しい評価および加工プロセスを確立した。 実際にこのプロセスにより、高品質の単一量子細線を含むウエハー領域を見出すことに成功したので、今後は、そこから切り出した素子を用いて光学実験を進める。切り出した素子をレーザー発振させるためには、レーザーの端面への誘電体多層膜コートによる反射率制御が必要であるので、マグネトロンスパッタリングで誘電体多層膜を形成するプロセスの開発も進めた。今後の光学実験では、1次元電子正孔系の低密度極限から高密度電子プラズマ形成に至るまでの吸収・発光を調べる。特に中間密度領域での1次元電子正孔系の連続状態端の励起強度依存性を実験的に精度よく観測することを目指す。
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