研究概要 |
これまで,海浜変形に関する研究は枚挙に暇がないほど数多くのものがなされている.ただし,これらの既往の研究は,沖浜帯から砕波帯,遡上域までを対象とする研究がほとんどである.海浜において大規模な地形変動をもたらす高波浪時には,このような沖域から遡上域までの海浜部のみならず,波が遡上し,さらには越波が生じる海浜域においても大きな地形変動が生じる.しかし,このような間欠的に生じる越波現象に伴う地形変化については,これまでほとんど研究がなされていない.その理由は,(1)現象の生起がまれであり,またその発生箇所も予測が困難であるため,現地データがほとんど蓄積されていない,(2)間欠的に生じる越波による,ドライな砂面上の薄層流を記述する動力学が確立されていないことなどが挙げられる. そこで,今年度の研究においては,七北田川河口部において台風通過後の越波による地形変化を再現するためのモデルの開発・改善を行った.その結果,堆積量に関する予測式の誤差はおおよそ0.5倍~2倍の範囲に収まっており、台風18号のような波浪条件においても既存の算定式が適用できることが分かった。 なお,当初,遡上に伴う土砂移動の詳細を検討するために,現地調査にのみならず,室内実験による検討も予定していたが,今年度4月より所属する東北大学大学院工学研究科における実験棟が改修に入り,次年度の春まで実験を行うことが出来なくなった.そこで,今年度および次年度の研究においては現地データによる検討を中心に据えることとした.
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