粘土(pH7.60)またはローム(pH6.24)を充填したガラスカラムを用いて、親水性および疎水性のブラックカーボン粒子の土壌カラム中での挙動を調べた。流速0.036cm/sの定常流において、土壌カラム内に堆積したブラックカーボン粒子を測定し、1次沈殿式で近似した。このモデルは、土壌の乾燥重量当たり、一定で均一なブラックカーボン粒子の付着を仮定しており、実験データへの最少二乗法近似により、粘土粒子表面へのブラックカーボンの付着量と、付着速度係数をもとめた。 これまでの研究で、水で飽和した砂層内の親水性ブラックカーボンの移動は、ブラックカーボンの表面に天然有機物が付着することにより変化することを報告しているが、粘土層やローム層内では天然有機物の付着は疎水性ブラックカーボンの移動を促進することはなかった。これは、おそらく天然有機物を付着したカーボンブラックのサイズ分布が0.241±0.062μmと大きかったためと考えられる。このことから、自然の地層中では疎水性のブラックカーボンの移動は限定的であることが考えられた。一方、親水性のブラックカーボンは粒径0.080-0.190μmであり、pH中性の条件で土層中で移動しやすかった。しかし、粘土層中とローム層中では親水性ブラックカーボンの移動が異なっており、その原因として、陽イオン交換容量(CEC)、土壌中のフミン質含有量、土壌の表面積、流量などによることが示された。CECが大きな土壌中では、ブラックカーボンの移動が妨げられた。土壌中のフルポ酸はカーボンブラック粒子を分解し、粒径を0.010-0.10μmとして、土壌中の空隙に入りやすくするため、クロマトグラフィー効果によりカーボンブラックの流出が遅延した。これらのことから、粒径0.10-0.38μmの大きな粒子のほうが、粒径の小さな粒子よりも移動性が高いことが示された。
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