都市の象徴でありまた経済の中核を担うべき超高層建物が、巨大地震特有の長周期地震動を長い時間受けたときにどう挙動するか、そしてどのような損傷がありうるか、さらにそれを防ぐためにはいかなる措置が必要であるかを明らかにすることを研究の目的とし、(1)超高層建物の典型的な接合形式がもつ復元力特性のモデル化、(2)このモデルの妥当性を検証するための実験、(3)上記の研究成果を活用した日米超高層建物の耐震性能詳細評価、からなる課題を設定する。初年度においては、(1)に取り組むとともに、(2)の実験と(3)の耐震性能評価を開始した。復元力特性のモデル化については、今までに構築してきた接合部の復元力特性に関する膨大なデータを再整理し、特に長周期地震動による揺れに特徴的な「繰返し効果による剛性・耐力劣化」をモデル化するとともに、それを汎用解析コード OpenSeesに組み込んだ。モデル妥当性検証実験では、柱梁接合部位を模擬した実寸の約2/3の試験体を製作、その保有性能を準静的載荷実験によって調べた。損傷に対する主要因子である、床スラブと鋼梁の合成効果、梁フランジ端部の溶接詳細、梁ウェブと柱との接合方法に注目し、これら因子が亀裂や破断に及ぼす影響、また亀裂や破断が復元力の劣化特性に及ぼす影響を詳細に検討した。耐震性能詳細評価では、日米それぞれの設計プラクティスによって設計された20層鋼構造建物を想定し、これをOpenSeesを用いてモデル化、従来から用いられてきた設計用地震動、長周期地震動、直下型地震動を入力とすることから、それぞれのモデルの応答特性を評価するとともに、崩壊に至るまでの余裕度を"Incremantal Dynamic Analysis"を用いて検討した。
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