FePt/B_4C系でのスピン注入実験を行う前段階として、通常の非磁性金属であるCuに対しCo_2MnSiからスピン注入を行うためのスピンバルブ素子の作製と評価を行った。Co_2MnSi薄膜はMgO基板上に成膜することにより、良質なエピタキシャル成長膜を得ることができた。X線回折による構造評価の結果、L21構造を示す明瞭な規則格子線を観測し、高いスピン偏極率を得るのに重要とされる高規則状態が実現されていることが分かった。また磁化測定によって得られた磁化の大きさはほぼバルク値通りであり、バルク単結晶と同等の試料が作製できることが分かった。その後、微細加工の上で必要となるフォトマスクパターンやで電子線描画パターンを設計した。デバイス薄膜はイオンビームスパッタ法によって作製し、微細加工はEBリソグラフィーとフォトリソグラフィー及びArイオンミリングによって行った。測定は4端子プローバーを用い、Cuへのスピン注入が出来ているかを非局所法によって評価した。その結果、室温において明瞭な非局所シグナルが得られ、スピン蓄積効果を示唆する結果を得た。観測されたスピン蓄積効果の大きさを示すΔR_Sは50nmのギャップ長において8mΩであり、Co_2MnSiの高いスピン偏極率を示す成果を得ることができた。ハーフメタル材料から純スピン流の生成に成功した例は過去にもほとんど報告がなく、重要な結果を得ることができた。
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