Green Rust(GR)は層状のFeIIイオンを多く含むカチオン層に様々なアニオン(X)が入る構造をとっている。初年度はCl-などを添加したGRを合成するために、FeIIやFeIIIの塩を溶解させた液にNaOH水溶液を加える方法を確立した。合成においては、温度を制御するとともに気相雰囲気も十分制御し、大気酸化を抑制した。これらの合成した各種のGRに、酸素ガスを吹き込み酸化させた。この酸化途中で形成する生成物の構造・形態を、X線回折法による生成物の構造解析、また水溶液のpHや電位のモニターにより、生成物と水溶液の反応条件の関係を調べる技術を確立した。特に、酸素を吹き込んだときの溶液のpHや電位の連続的な測定と、生成する粒子の種類の関係を、精密に追跡できるようにした。幾つかの生成物試料については、X線吸収分光法による化学状態変化や局所構造を調べるように、その技術も習得した。これらの研究では、まず反応条件や異種イオンを添加する量は大きくは変化させず、実験条件の確立に努めた。初年度は、短期間であるので、上記のようにして確立した実験技術は、次年度に応用展開するための計画も練った。特に、GRからオキシ水酸化鉄の変化に伴う構造変化過程におけるリン酸等の効果を、反応中の溶液の分析、各条件で生成する生成物の種類の同定や精密解析により調べるために、FeIIIからなる最終的な鉄さび成分の核生成から成長などの不均一な過程に関する情報を得るための実験条件を検討する。
|