冬虫夏草が生産するコルジセピンは抗腫瘍作用を示すことから、コルジセピンのアナログは、HIVなどの感染症や白血病などの治療薬として研究が進められている。一方、冬虫夏草が菌体内あるいは培養液内に生産する多糖類については、免疫賦活能力を有することが示唆されているが報告例は少なく、冬虫夏草が生産する多糖類の性質と抗腫瘍活性や免疫賦活活性などにっいては基礎的データが不足している。 このような背景から、本研究では冬虫夏草が生産する多糖類の性質を明らかにすること、これに基づいて免疫賦活作用と多糖類の性質との関係を明らかにすることを目的として検討を進めた。コルジセピンは振盪培養法ではほとんど生産されず、液体表面培養法のみで生産されたが、多糖については、いずれの培養でも菌体内多糖と菌体外多糖の両方に免疫賦活作用が確認できた。得られた多糖の構成糖と分子量を測定したところ、菌体内多糖、菌体外多糖ともにグルコース、マンノース、ガラクトースから構成されていた。菌体外多糖はマンノース約70%、グルコース5-10%、ガラクトース約20%で構成されていたが、菌体内多糖ではマンノースが40-50%に減少し、グルコースとガラクトースはそれぞれ15-25%、20-35%に増加していた。また、GPCによる分子量分布の測定では、菌体内多糖は菌体外多糖に比べて高分子量成分が多い分子量分布を持つていた。免疫賦活活性は菌体外多糖に比べて菌体内多糖のほうが高い値を示したことから、分子量が高い画分、グルコースの含有率の高い画分が高い免疫賦活作用を示すと考えられる。現在、多糖成分を分画し、構造と免疫賦活成分の関係を詳細に検討しているところである。'
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