研究課題/領域番号 |
09F09314
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
楠見 明弘 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授
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研究分担者 |
CHADDA Rahul 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 外国人特別研究員
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キーワード | 1分子追跡 / 細胞膜 / ナノ集合体 / 情報変換 / 可塑的分子複合体 / ナノドメイン |
研究概要 |
細胞膜上のラフト領域は、細胞のシグナル変換やウィルス感染など、重要な生理/病理過程に関与している。しかし、実際にどのように機能するかについては、ほとんどわかっていない。解明が難しかった理由は、(A)大きさが数nmから数10nmと小さいこと、(B)ラフトの寿命やそこへの分子の滞在時間は外部からのシグナルやウィルスなどの刺激によってラフトが安定化する前は、1秒以下と短いこと、(C)そのため、ラフトを直接に調べる手法がほとんどなかったこと、等である。そこで、本研究では、以下の方法によって、ラフトの形成機構と作動機構の解明を目指す。(1)我々が開発してきた高速1分子追跡法を駆使し、ラフトへの分子の出入りを直接観察する。(2)本研究をおこなう外国人特別研究員のRahul Chadda博士が成功した、ラフトをさまざまな方法で大きくしたり、安定化したりする方法を用いる。さらに、このようなラフトの成長や安定化の機構を明らかにすることによっても、ラフトの形成と機能の機構を明らかにすることを目指す。 本年度は、ラフトに濃縮されると考えられている分子として、GPIアンカー型分子(CD59など)をとりあげた。一方、ラフトに入りにくい分子として、不飽和リン脂質を取り上げた。これらの分子をタイムラプス1分子イメジング法で1分子追跡した。Rahul Chadda博士本人が開発した方法で、拡大し安定化させたラフトを用いて実験した。これらのマーカー分子の拡散挙動は以下の通り。(1)各分子はそれぞれの領域内で自由に拡散した。(2)境界を越えて移動することはほとんど無かった。 (3)境界に濃縮されることもなかった。(4)各領域での拡散係数はほとんど同じであった。これらの結果を基に、両方の領域に分配する分子についての検討を進める予定である。
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