研究概要 |
高次捕食者がどのように環境を利用しているのかを明らかにするには、詳細な行動情報と利用環境情報が必要である。平成21年度は、海洋や河川などの多様な環境を利用するカワウを題材に、秒単位での行動情報の記録を行った。これまで過去数十年間にわたって害獣として扱われてきたカワウは、非常に警戒心が強く、捕獲が困難である。そこで、カワウの成鳥を捕獲するために、経口麻酔薬を利用した方法を開発した。また、捕獲して行動記録装置を装着した後、再捕獲して装置を回収するために、遠隔切り離し装置の開発を行った。愛知県、岐阜県での実験の結果、カワウの成鳥に行動記録計を装着することに成功し、採餌・飛翔行動データが得られた。高速サンプリングされた加速度情報により、採食トリップ中のカワウの行動が再現された。離巣から最初の潜水までの飛翔時間は7分から15分、最後の潜水を行ってから帰巣までの飛翔時間は6分から13分であった。飛翔速度を一定と仮定すると、カワウの行動圏が推定でき、本種が繁殖地からあまり遠出することがないことがわかった。また、繁殖中のカワウは、離巣後、飛翔・着水を繰り返し、その後潜水を行っていた。深度データには、深度2メートルから6メートルほどの潜水バウトと,深度50センチメートルのごく浅い潜水バウトが含まれており、最大で15メートルの潜水を行っていた,一定深度に長時間留まる潜水が多く、カワウが川や海の底で採食を行うことが明らかになった。今後は、採食行動と位置情報を同時に記録する装置の装着を行い、地理情報システムを用いて、高次捕食者と環境の相互作用を明らかにする必要がある。
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