海洋の高次捕食者である海鳥類は、柔軟に海洋環境の変動に対応して、繁殖・採餌を行なっていると考えられる。本研究では、海鳥類にGPS等のデータロガーを装着し、衛星リモートセンシングで得られた海洋物理・生物情報と統合解析することによって、海鳥がどのように海洋環境に対応しているかを明らかにすることを目的とした。本年度は、多様な環境への行動的対応を記録するために、新潟県や岩手県で繁殖するオオミズナギドリ、青森県八戸市のウミネコ、ペルーで繁殖するペルーペリカン、ペルーモグリツバメの生態調査を行った。その結果、海鳥はさまざまな時空間スケールで海洋環境に対応していた。例えば、体サイズの性的二型を示すオオミズナギドリは、体の大きな雄のみが津軽海峡の強風に耐え生産性の高い北海道東部沿岸域まで採餌に行くことが可能であることや、雌雄ともに海洋生産性の年変動に適応的に対応して採餌効率を上昇させていることが明らかになった。また、ウミネコにGPSデータロガーを装着した結果、海洋でカタクチイワシやコウイカを捕獲するだけでなく、加工場から出る廃棄物等を利用しており、これらの餌の分布や時間的な利用可能性に合わせて最適に移動していることや、東日本大震災により激変した餌環境に影響を受けていることが明らかになった。こうしたデータロガーは比較的大きな動物にしか使用出来なかったが、200g程度のペルーモグリツバメへの装着にも成功したことにより、今後はより多様な動物の移動戦略・環境適応が明らかになることが期待できる。
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