これまでの研究で、パキスタンのウリ科作物のウイルス病において発生するカボチャモザイクウイルス(WMV)は、ダイズモザイクウイルス(SMV)とリコンビナントを起こしていると考えられた。そこで本研究では、リコンビナントが起きていると考えられるP1領域を逆遺伝学の技法で解析するために、WMVとSMVの感染性クローンの構築し、両者のキメラの作成と接種試験によりキメラウイルスの宿主範囲を調査し、ポティウイルスの主範囲決定遺伝子を解明することを目的としている。このような研究によって、リコンビナントによる新ウイルス系統の発生機構、およびウイルスの宿主範囲決定機構が分子レベルで解明されよう。 そこで初年度はまず、パキスタンおよび日本のWMVをより詳細に調査した。まず宿主範囲とウリ科植物で野病徴を比較したところ大きな差異がなかったが、日本産WMVの一部は弱毒株であった。つぎに、塩基配列レベルでの差異を解析したところ、日本産WMVとパキスタン産WWMVは分子系統樹で異なるクラスターに属するが、クラスターと病原性には関連がないことが判明した。次に、WMVの宿主範囲決定遺伝子部位を逆遺伝学の技法で解明するために、WMVの感染性全長cDNAクローンの作出を目指した。WMVにおける感染性全長cDNAクローンは世界中でこれまで未報告であり、実験的にはかなり難しいが、現在までにほぼ三分の二まで終了した。さらに、WMVに近縁で組換えを起こすSMVも感染性クローンを作成中で、こちらもほぼ三分の二まで終了した。
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