本研究はバングラデシュにおける養魚・作物複作方式経営の生産物の販売先別の利潤と農地利用の関係を明らかにすることを目的としている。今年度は輸出用エビ流通の成果を評価するために、2010年7月にクルナ管区のエビ加工場6社、エビ加工場原料購買代理人6社、大規模仲買人30社、小規模仲買人60人を調査し、各流通主体の平均的な流通費用と利益を分析し、次のことを明らかにした。 エビ輸出システムにおいては、すべての流通主体が利益を得ているが、これは昨年度に明らかにした多段階の流通主体間の取引において川下にある主体が川上にある主体に対して、無利子で貸金をする一方、川上主体は川下主体にエビの全量を販売する固定的な取引関係の中で、各流通主体に利益が確保されるよう調整されているためと考えられる。ただし、より川下段階にある流通主体がより多くの利益を得ており、買い手有利の流通となっている。 売り手・買い手間の利益の分配は、取引関係が固定的になればなるほど、取引の方法により異なった結果がもたらされる。エビ加工場は仲買人からの買取価格の決定権を有している。また、仲買人は養魚経営(エビ農家)から買う時に、取引量が少なければ買取価格を下げるよう交渉する事例がみられる。これらは買い手側により多くの利益の分配をもたらす方法である。仲買人や養魚経営(エビ農家)は利益を得ているものの、取引価格を先に決定する、そうはならず交渉を要する場合は取引量が少なければ価格を高める(逆もいえる)姿勢を崩さずに量と価格の決定に至ることにより、さらに利益を増やす可能性がある。
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