当該年度の研究目的は、効率よく骨再生を誘導するために、昨年度に開発した新規の多機能性足場材料を最適化することである。 架橋密度を変化させることにより、生体吸収性の異なるゼラチンハイドロゲル多孔質足場材料およびゼラチンハイドロゲル粒子を作製した。骨再生を正に制御する増殖因子である骨形成タンパク質bone morphogenetic protein (BMP)-2と、炎症性サイトカインであるIL-6の生物活性を調節するトリプトリドなどの数種類の薬物とを、単独あるいは組み合わせてゼラチンハイドロゲル多孔質足場材料あるいは粒子に含浸させた新規のバイオマテリアルを作製した。得られた種々のバイオマテリアルをマウス背部皮下へ埋入することにより、生体内における薬物の徐放性を評価した。続いて週齢の異なるラットの尺骨に対して骨欠損モデルを作製し、種々のバイオマテリアルを欠損部へ移植して経時的に実験動物用マイクロCTスキャナを用いて骨再生の程度を評価した。その結果、従来の方法では弱い骨再生しか得られない加齢ラットの骨欠損部においても、BMP-2とIL-6の生物活性を調節する薬物とを含むゼラチンハイドロゲル多孔質足場材料が骨再生を促進することが示唆された。得られた研究成果は、従来から報告されていた加齢などによる骨欠損の治癒不全に対して、新たな治療法を提案しうる点で意義深く、重要である。
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