オゾン層破壊化学物質の代替物質として導入されている1-ブロモプロパン0、400、800、1000ppmに一日8時間、週7日、4週間曝露した各群12匹のウィスターラットから剖出した小脳をホモジェネートしたサンプルを用い、thiobarbituric acid reactive substances(TBAS)、カルボニル化蛋白、reactive oxygen species(ROS)、nitric oxide(NO)を定量した。その結果、いずれの指標も量依存的に増加していることがわかった。一方、蛋白濃度は低下していたため、蛋白量あたりでも前記指標を調べたが、やはり量依存的に増加していた。抗CD11b/c抗体を用いて、蛍光免疫組織化学により小脳白質のミクログリアを同定した。CD11b/陽性のミクログリア領域ならびに突起長が1000ppmで有意に増加していた。顆粒層においてはミクログリアを見つけることが困難であったが、やはり活性化したと思われるミクログリアが観察された。変性したプルキンエ細胞の近傍に存在するミクログリアの存在も確認された。本研究により、ミクログリアの形態学的変化が、1-ブロモプロパン暴露による小脳への影響を検知するすぐれた指標であることがわかった。同時に本研究により、酸化ストレスが1-ブロモプロパンの中枢神経毒性の作用機序を説明するひとつの因子であることが明らかとなった。1-ブロモプロパンはヒトにおいて失調歩行を引き起すことが知られているが、その原因については、ヒト症例のさらなる解析とともに動物実験による検証が必要である。
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