研究の目的は次の2つである。第一に、中国の政策研究、とくに中国の木材輸入拡大につながった1998年以降に実施されてきた天然林保護政策が地域の森林、林業、木材産業および木材貿易にあたえた影響を実証的に明らかにすること、第二に、計量経済モデルの構築とそのモデルの改良によって、中国の木材市場と木材貿易の予測と日本を含めた東アジア地域への影響分析を行うことである。 これら2つの目的を達成することによって、中国の木材市場と木材貿易の拡大が日本の林業、木材産業に与えた影響を質的な面と量的な面から分析し、明らかにすることができる。 今年度は、1998年以降の天然林保護政策の実施によって、対象地域の森林資源にいかなる影響が及んだのかについてパネルデータ分析の手法を用いて分析した。分析の結果、同政策は、森林資源の回復にポジティブな影響を及ぼしたこと、とくに同政策による植林、保育への投資、見回り管理の強化、伐採量の削減が効果的であったことが明らかとなった。これらの結果は、中国の木材輸入拡大の要因となり、それによって日本の林業、木材産業に影響を及ぼしている天然林保護政策の中国国内での効果を客観的に示した意義を持つとともに、同政策の今後を考える上で基礎的な情報を提供したという意義を持つ。
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