研究課題
第一年次では、大陸渡来の古代芸能を伝承する都市寺院祭祀を調査したが、第二年次にあたる本年度は、これを引き継いで次の3点を調査した。1)古代祭祀:古代寺院の修正会、修二会の系統の祭祀として中尊寺の古式能、毛越寺の延年舞を補充調査した。西浦田楽の修正会の要素にも注意した。2)中世祭祀:播磨の上鴨川の田楽系翁舞、南信濃の霜月仮面祭(中郷集落)、奥三河の花祭(月集落、下黒川集落)と田楽(田峯集落)、遠州の田楽(西浦集落、藤守集落)など、典型的な中世祭祀を択んで、徹夜の上演に密着し、写真、録画などにより、儀礼、芸能の実態を細部に到るまで、記録考察した。この調査を通して、「宮座」という中世的祭祀組織の独占的・特権的性格、「成年式」という通過儀礼の特色などを総合的に理解することができた。その共通の核となっている田楽芸能の中に「高足」などの渡来芸の痕跡が残されている事実を確認し、全体として、荘園に依存した古代寺社芸能から、宮座を背景として、土着的、日本的な方向に展開してきた中世芸能の特色を考察することができた。別に、既に儀礼から脱却して独立の芸能に向かっている中世後期の祭祀事例として、庄内の黒川能を調査した。この古式能が、翁や三番〓などの神霊光臨演出の古い形を伝えていることに注目し、日本芸能史の時代的進化を実感することができた。3)近世祭祀:富裕商人層を基盤に勃興した近世祭祀の事例として、京都の祇園祭りを調査した。ここでは、祭祀組織の単位となっている29の山鉾の地域活動を中心に考察した。中世農村の宮座や近世江戸の神輿組など、男性中心の活動に比べて、女性を交えた贅沢で華やかな祭祀活動に「近世的性格」を実感した。なお、奥三河の田峯田楽のあと、特設舞台で行われた地芝居(歌舞伎)にも、農村における富裕商人の経済力が推進力となっている状況を観察した。以上により、古代、中世、近世にわたる日本祭祀の特徴を、大づかみに把握することができた。
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Daoism : Religion, History and Society
巻: Vol.2 ページ: 185-230
中国道教
巻: 5 ページ: 48-52
福建芸術
巻: 2010年6期 ページ: 24-29