(1)研究の目的 本研究は、中国で急激な都市化により都市周辺部の農民の住む集落が市街化され大きな社会問題となっている城中村の持続的な開発整備方法を検討するため、城中村と日本の高密な住宅地区の空間特性等の状況や開発方法とを比較することを目的としている。 (2)研究調査の実施状況 (1)日中両国の研究対象について、中国の研究対象としては、西安市の城中村(187地区)のうち、すでに開発が行われた碑林区の15城中村と開発計画のある東三爻村を取り上げ、日本の研究対象としては、地域の機能を継承して持続的な開発を行っている大阪の空堀地区を取り上げた。 (2)両国の研究対象地域の状況を比較するために、中国と日本の調査をそれぞれ行った。中国側への調査は2回行った。第1回は2009年8月2日~22日に行い、碑林区にある15の城中村の開発方法を聞き取り調査した。第2回は2009年12月18日~2010年1月4日に行い、開発計画のある雁塔区の東三爻村の借家人に今後の居住状況などを聞き取り調査した。日本側への調査は、2009年10月~12月に大阪市中央区の空堀地区に選定された12の路地単位内の居住者へ近隣活動とコミュニティのヒアリング調査を行った。 (3)これまでの研究で明らかになったこと (1)中国西安市の調査では、城中村の改造はスラムクリアランス型大規模改造方法で行なっており、これは住環境の改善はできるが、改造後は収入が少ない借家人は住み続けられるか不確定である。 (2)日本側の調査では、大阪市の空堀地区には路地単位ごとに多様な空間やコミュニティを持ち、路地単位ごとの特性を生かした自律的な住環境形成と住環境の保全の更新を考えることが重要である。
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