1.研究の目的 本研究は、中国で急激な都市化により都市周辺部の集落が市街化され大きな社会問題となっている城中村の持続的な開発整備方法を検討するため、城中村と日本の高密な住宅地区との比較を行うことを目的としている。 2.研究調査の実施状況 (1)187城中村の開発状況と碑林区の15城中村の開発方法のまとめを行った。 (2)昨年度調査した雁塔区東三爻村の借家人64世帯を追加調査し全100世帯の借家人の今後の転居志向を分析した。 (3)調査時点(2010年1月)で解体された村65村(西安市全187城中)、その内、村民が新居に入居した9村から集団が改造の主体となっている西何家村を取り上げ、50人についてヒアリング調査を行い改造後の居住変化を分析した。 (4)日本側の研究対象とする大阪市の空堀地区との比較を行った。 3.これまでの研究で明らかになったことと意義 (1)西安市187城中村の開発ではスラムクリアランス型大規模改造方法による住環境改善が可能であることが明らかになったが、下記の課題も判明した。(1)借家人は改造後他の城中村に住む志向性が高く、改造後の城中村が農村部から流入した住民や低収入者の受け皿機能を継承できるかということ。(2)城中村改造は村民の戸籍、土地所有権、経済の形態に変化をもたらし、政府が補償する住宅と店舗は改造後の村民の生活を支えられるかという課題、(3)村民の家族の居住形式や居住世帯、コミュニティに大きな変化をもたらしたこと。 (2)日本側の調査では、大阪市の空堀地区には近隣意識、空間、近隣活動、コミュニティには相互に密接な関係性があり近隣空間の持続可能性を考えていく上で必要不可欠な要素であることが明らかになった。 (3)社会制度は異なるが日中両国の開発から学ぶことは、日本からは多様なコミュニティを支える自律的な住環境形成と保全的な更新を考える開発方法、中国からは政府が主導する中国城中村の改造スピードを生かすことである。 以上、急速に変化している中国城中村の居住実態とデータが得られたことは資料的に大きな価値があると考える。
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