研究課題/領域番号 |
09F09729
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
CAMPBELL Robert 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授
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研究分担者 |
FRALEIGH Matthew 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 比較文学 / 漢詩文 / 台湾出兵 / 文明概念 / 日本:清国:台湾 |
研究概要 |
十九世紀の日本人著作漢詩文の歴史において、明治二十七年から翌二十八年の日清戦争が一つの転回点と考えられている。そのころ森春濤及びその息子槐南が起した漢詩吟社である「星社」が漢詩壇の中心な存在となっていたが、明治三十年前後を境に、漢詩の吟社の数や活動、及び詩作という行為自体は減る一方となる。この急激な衰退には、文学についての新しい考え方の到来や、教育機関の変化及び教育内容の変遷、さまざまな要因が寄与していたと思われるけれども、本プロジェクトは、明治日本の清国に対する象徴的な勝利よりさかのぼってそれ以前の明治日本と清国との衝突である明治七年の台湾出兵を起点に、当時の日本の詩文及びその他の出版メディアにおける対清言説を調べることにした。近代的な国民国家概念を前提に外交に臨もうとした明治日本と、従来の伝統的な枠組みの中にこの問題を対処しようとした清国との衝突とも位置づけられる台湾出兵には、「文明」に対する新しい考え方が普及するきっかけとなったということが判明した。詩文に造詣の深い岸田吟香が日本初の従軍記者となったことで、台湾出兵は日本言論史に記念すべき出来こととなったのを踏まえて、吟香が『東京日々新聞』紙上で連載した「台湾新報」及び「台湾手稿」に加えて、当時の日本の詩人が台湾出兵について詠んだ詩、書いた漢文を主要な題材に、台湾出兵の意義を考察することにした。特に台湾の原住民についてどのようなイメージが作られたかを中心に研究を進めた。研究成果は、アメリカのマサチューセッツ大学アマースト校及びブランダイス大学で発表した。その上、論文としてまとめて英文の学術雑誌に提出したが、現在まだ審査中である。
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