本研究テーマの考察の前提となるロシア帝政期トルキスタンの土地・徴税問題に関する論文2本を雑誌に発表した。そして引き続きソ連期ウズベキスタンの土地水利改革そのものの研究を進め、革命・内戦期の人口減少・経済破綻の影響、生産・消費・社会構造に対する土地水利改革の影響、政策決定過程におけるソ連中央と共和国の関係などを考察した。特に、単に中央と共和国の関係だけでなく、共産党中央アジア局、国立銀行、綿作委員会などさまざまな行政・経済機関の間の関係が重要であること、綿作を管轄する機関と小麦を管轄する機関の間に緊張関係があったこと、共産党・政府の中でのロシア人とウズベク人の関係も、こうした諸機関の間の関係と組み合わせて考える必要があることが明らかになった。これらの問題について、数本の論文を投稿した。 研究の史料的基盤をさらに強化するため、モスクワのロシア国立経済文書館、ロシア国立社会政治史文書館、ロシア連邦国立文書館、ロシア国立軍事文書館、およびサンクトペテルブルグのロシア国立歴史文書館で一次史料を集めた。また、価格や税などの数量データをエクセルで整理し、時系列的な変化やウズベキスタンの中の地方ごとの違いを把握できるようにした。こうした作業により、ソ連がウズベキスタンで実施した経済政策が、どの程度「搾取的」「植民地主義的」であるのかについて、先入観にとらわれず実証的に考察するための基礎を固めることができた。
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