研究課題
我々は近年、鉄錯体を触媒として通常は切断の困難な有機ニトリルのC-CN結合、およびシアナミドのN-CN結合が、温和な条件で切断できることを見出している。実際には、有機ニトリルとヒドロシランを錯体触媒存在下で反応させると、C-CN結合が切断されSi-CN結合が生成する。従ってSi-CN結合は生成はするものの、切断はされないように思われる。しかし実際にはSi-CN結合部分で組み換え反応が起こっていても、つまりSi-CN結合切断反応が起こっていても見かけ上は分からない。本研究では今まであまり注目されてこなかったSi-CN結合の切断についての知見を得る目的で研究を行った。Et_3SiHとt-BuMe_2SiCNに触媒量の種々の遷移金属錯体を共存させベンゼン中室温で光照射反応を行った。その結果、(C_5H_5)Fe(CO)_2Meを触媒として用いた場合にEt_3SiCNとt-BuMe_2SiHの生成を確認した。その際のTONは5.1であった。鉄錯体非共存下ではそのような反応は進行しなかったことより、鉄錯体が触媒として作用していることを確認した。シクロペンタジエニル配位子上のHをMe, SiMe_3, Iにした鉄錯体についての検討を行ったが、置換基がHの場合が最も高い触媒活性を示すことが分かった。本研究により、ヒドロシランとシリルシアニドの間でSi-HとSi-CNの結合組み換え反応が起こることが初めて明らかにし、この反応は鉄メチル錯体を触媒として進行することを示した。触媒反応機構についての考察も行った。
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Heteroatom Chem.
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Phosphorus, Sulfur, and Silicon, and the Related Elements
巻: 185 ページ: 1054-1060
Comptes Rendus Chimie
巻: 13 ページ: 943-953