歯牙は、上皮間葉相互作用により形成され、近年培養歯上皮細胞と培養歯間葉細胞を3次元的に組み合わせる組織工学的な手法を用いた歯牙再生の試みが報告されてきた。歯間葉細胞の由来に関してはES細胞、各種間葉系幹細胞など既に確立された誘導可能な培養細胞が幾つか報告されてきた反面、現在のところ歯上皮細胞に関しては、適当な培養細胞がない。そこで、その歯上皮細胞の供給源としてマラッセの上皮遺残由来の細胞が利用できないか否かを検討する目的で本年度は以下の研究を施行した。 1.歯髄由来幹細胞の解析 歯髄由来間葉系幹細胞を乳歯、成人智歯と由来の異なるもので骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞等への多分化能の比較検討。 2.in vitroで歯牙形成をおこす実験系の改善、確立 以前より行っていたマウス胎児を用いたE8.10第一鰓弓やE15臼歯歯胚を用いた器官培養系やE15歯胚をもちいた腎被膜下への移植の実験系の改善。E15臼歯歯胚を歯上皮、歯間葉細胞に分けた後、酵素処理にてsingle cellにしたものをスキャフォールドともに腎被膜下に移植し歯牙形成をおこす実験系の確立。 3.歯数が増えるマウスの解析 遺伝子欠損また過剰発現にて歯数が増えるマウスも用いて歯数制御のメカニズムを解析。 4.マラッセの上皮遺残由来培養細胞の樹立 (1)ヒトの健康な歯周組織(HPT : healthy periodontal tissues)(2)ヒトの根尖病巣部の組織(IPT : inflammatory periapical tissues)より培養細胞樹立するための準備をすすめている。
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