平成22年度は、クラウンエーテル導入オリゴチオフェンの自己組織化過程を詳細に解析するために、紫外・可視吸光分光光度計や円二色性分散計・動的光散乱計などの分光化学的手法を用いた検討を行った。さらに形成した自己組織体の形態について、透過型電子顕微鏡をはじめとした各種顕微鏡的手法によって検討した。さらに、クラウンエーテル部位をホスト部位として様々なカチオン性ゲスト分子を添加する事で、自己組織化のプロセスの制御や外部刺激による自己組織体の構造変化について検討した。 合成したオリゴチオフェン誘導体はクロロホルムとエタノールの混合溶媒に対して低濃度条件でもゲル化出来る、良好なゲル化剤であることが確認された。また、この有機ゲルに対して金属イオン選択的に自己組織体の消失を伴うゾルーゲル相転移を誘起させることに成功した。特にカリウムイオン添加時には、クラウンエーテル部位に対して0.5モル当量までは大きな変化は見られないが、さらに0.5モル当量の添加により、劇的にゾルーゲル相転移が誘起された。これは、この相転移過程には、金属イオンとクラウンエーテル部位との錯形成においてアロステリズムが関与していることを意味する。この相転移過程では、劇的な蛍光増強を伴うため、このゲルは新しい金属イオンセインサーと成り得る。 光学活性なゲスト分子添加により、円二色性スペクトルで活性を示す、光学活性な超分子ゲルの形成が確認された。興味深いことに、ジアンモニウム型の光学活性ゲスト分子を添加すると、この超分子ゲルは、チキソトロピーに基づく自己復元能を獲得することが確認された。
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