研究概要 |
昨年度合成に成功した単環化合物からナカドマリン合成の重要な合成中間体である四環式複素環化合物への誘導を目指して、以下に示す二つの新たな合成ルートを検討した。まず、四級炭素上のエステル基をアルデヒドに変換し水酸基をアセチル基で保護した後、N-アルキルヒドロキシアミンとの反応により得られたニトロンに対してフリル基の分子内フリーデルクラフツ反応による5員環形成反応を検討した。しかし反応は期待通りに進行したものの、所望の立体とは逆の絶対配置を有する生成物が単一で得られた。そこで、次に反応させる順序を逆にして、パラジウム触媒を用いたジアステレオ選択的なアリル位アミノ化反応を行った後、分子内フリーデルクラフツ反応を行う第2のルートを検討した。具体的には、先に合成したアルデヒドを2-アミノエタノールと処理してヒドロキシイミンを合成したのち、パラジウム触媒と塩基存在下で加熱したところ、分子内の水酸基がイミンを攻撃しO,N-アセタールが形成すると同時に分子内アリル位アミノ化反応が進行して、新たに形成する末端ビニルに関して望む立体化学を有する二環性ラクタム体へと誘導することに成功した。このジアステレオ選択性は、用いる塩基の種類やイミン形成に使用する1,n-アミノアルコールによって、大きく変化することを突き止めた。種々条件検討した結果、最適条件下において所望の立体化学を有する生成物を収率80%、5:1のジアステレオ選択性で主生成物として得ることができた。最後に、単離精製したO,N-アセタール体に対して、ルイス酸としてTMSOTfを氷冷下反応させることで、フリル基の分子内フリーデルクラフツ反応が高立体選択的かつ高収率で進行し、ほぼ定量的に目的とする四環式化合物を単一化合物として合成することに成功した。今後も、全合成を目指して研究を続行する予定である。
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