研究概要 |
有機触媒による不斉合成反応の開発とその実用化は、従来の金属触媒に比べ環境への負荷が低い可能性を秘めているという点で、今後の合成化学が目指すべきひとつの大きな課題であり、工業的な面からも大いに注目されている。当研究室では、近年、キラル二官能性有機触媒の創製と不斉合成への応用研究において、六員環シス-ジアミン型二官能性有機触媒の創製と不斉合成への応用に成功している。その特徴としては、ある共通のキラル中間体より、ふたつの異なるキラル二官能性有機触媒が創製できる。これらふたつのキラル二官能性有機触媒は、それぞれ不斉アルドール反応に用いられ、生成物として両方の鏡像異性体が高い鏡像体過剰率で得られた。しかし、このシス-ジアミン型二官能性有機触媒は開発されたばかりであり、例えば鏡像体過剰率や反応効率性と六員環置換基効果の関連性、または広範囲な不斉反応への適応性など、多くの解明すべき点が残されている。このため、本研究では、これらの触媒の創製をより簡略化し、系統的な触媒合成法の開発を目指した。とくに研究の初年度では、本研究室で開発した光学活性六員環シス-ジアミン型二官能性有機触媒の創製をより簡略化し、系統的かつ実用的な触媒合成法を開発した。すなわち、エステル置換基をアルキル基やアリール基に置き換えることにより、不斉アルドール反応に適用し、反応のジアステレオ選択性やエナンチオ選択性に及ぼす効果を詳細に調べた。また、シクロヘキサン環の1,2-ジアミンのみならず、1,3-ジアミン、1,4-ジアミン型二官能性有機触媒も創製して、触媒構造の最適化を目指した。それと同時に、効果的な触媒の簡略的な合成ルートを開発した。さらに、得られた触媒を用いて、幾つかの新しい不斉合成反応を開発した。
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