本年度(平成21年9月~平成22年3月)はメサ型ダイヤモンドpn接合の電気特性を表面状態と関連させて評価した。また、高精度の耐圧特性測定に実験系の改良が必要となり、真空排気系の整備等を行った。電子デバイスとして萌芽的ステージにあるダイヤモンドでは、パッシベーション技術など、デバイス形成の要素技術が確立していない。ダイヤモンドのメサ構造加工時に形成される欠陥、黒鉛化によるリーク電流の発生はデバイス高耐圧化に深刻な影響を与える。実験では、真空中での加熱黒鉛化により劣化したダイヤモンドダイオードを、水素プラズマによる水素化、大気中加熱による酸化処理を行い、その電気特性を評価した。水素化によって、表面層であるn型ダイヤモンド表面のパッシベーションによる表面伝導抑制が期待されたが、整流特性の改善は見られなかった。酸化処理では±20V程度のダイオード駆動電圧領域で著しい特性改善が見られた。これは基本的にホウ素ドープp型半導体表面および、メサ断面に露出したpn接合界面近傍の酸化によりリーク電流の原因となる欠陥準位がパッシベートされたことによると考えられる。しかし、ダイオード逆方向の耐圧特性は改善されず、高耐圧化にはドーピング構造、膜厚などの最適化が重要であることが示唆された。
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