本年度(平成22年4月~平成23年3月)はダイヤモンドpn接合の高品質化を試み、その電気特性の詳細な評価を行った。前年度の成果をもとに、特に酸化処理による高品質化を達成したダイヤモンドpn接合に関して順方向電流特性の詳細な評価を行った。実験には真空排気系を強化(本年度予算による)した高真空プローバチャンバーを用い、250Kから700K程度の温度領域で電圧印加電流測定、容量周波数特性、容量電圧特性の測定と数値解析を行った。その結果、ダイオード電流の立ち上がり特性は2種類の成分を含むことが分かった。この電流特性の温度依存性から、これらはDeep levelを介したトンネリングによることが分かった。また、2成分はそれぞれ異なる有効質量の電子によるものと考えられ、フィッティング結果は有効質量の報告値、mt*=0.306m0、ml*=1.81m0と良好な一致を示した。ここから現状ではpn接合界面において深い欠陥準位等を介したトンネリングがキャリア輸送を支配しており、結果としてLED発光効率の低下(他の研究課題にて実施中)原因となっていることが推測された。また、CV特性で観測された室温付近での高周波レスポンス低下にもn型ダイヤモンドが高抵抗であることと共に、深い準位を介したキャリア輸送が関係していると考えられる。
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