研究課題/領域番号 |
09F09804
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
嶋田 義仁 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 教授
|
研究分担者 |
GARANCE Ducros 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 外国人特別研究員
|
キーワード | 贈与交換 / 家族 / 非物質的相続 / フランス / 日本 / 宗教 / 婚姻 / お見舞い |
研究概要 |
Dr.Ducrosの博士論文「日本の結婚における贈与交換の諸相」を共同で検討した。 (1)嶋田は特に、日本には主に日本における贈答習慣を論じた伊藤幹治『贈与交換の人類学』(筑摩書房)のほか、嶋田の『異次元交換の政治人類学』(勁草書房)があり、特に嶋田のそれはアフリカ・イスラーム王国の事例であり、Ducrosが提起した贈答交換の問題は、日仏の枠組みをこえた広い問題であることを指摘した。Dr.Ducrosもレヴィ-ストロースやモースの交換論をふまえてこのことに同意した。嶋田は「グリオ考サハラ南縁イスラーム文明世界の音楽師」で、サハラ南縁の無文字社会で過去の栄光などが、日本の琵琶法師のような音楽師によって伝えられことを論じた。 (2)ただ、フランス社会における贈与交換についての研究が不足していることを認識し、Dr.Ducrosの1月末からのフランスでの調査の折にはこの問題に留意しつつ、フランス家族の贈与交換の研究を進めることにした。 (3)その際、家族と宗教祭祀の関係が日仏では著しく異なっているという重要な問題が指摘された。日本では仏壇や神道の祭壇が家のなかにあり、家は日本では宗教祭祀の中核になっているが、キリスト教国のフランスでは宗教祭祀は家の外にある教会で行われる。この違いが、非物質的相続関係が、日仏でどのように異なっているかをあきらかにすることが大きな研究課題としてあきらかにされた。 (4)この反省にもとづき、Dr.Ducrosは現在南フランスのトゥルーズ地方で現地調査中である。同時にフランスにおける家族問題を論じた文献収集にあたっている。 (5)他方嶋田は、指導する大学院生とともに、日本の農村における贈与交換慣行を調査中であるが、婚姻にともなう贈与交換とともに、災害や病気、死にともなう「お見舞い」行為が、親族とともに村落共同体をベースにして行われていることに注目している。
|