研究課題
嶋田はDr.Ducrosとともに、変革期にある日仏家族内における非物質的相続関係の研究をおこなった。Dr.Ducrosは、フランスにおける「家族の記憶」をめぐる研究史(M.Halbwachs、A.Gotman、B.Le Wita,J.Coenen-Huther,I.Bertaux-Wiane,A.Muxel)を通じて析出した「家族の記憶」分析の諸カテゴリーをふまえて、日本における「家族の記憶」のあり方を探った。本年その事例としたのは、70歳後半の新宗教教団幹部で支部大教会の会長である。海外布教に専心し、ヨーロッパ、東南アジア、アルゼンチンなど海外数カ国での布教活動をおこなった。家族の財はその祖父の代に教団に寄贈したという家族であった。ライフ・ヒストリーを通じて衝撃であったのは、家族と言うよりも教団の一員としての意識が強烈であったことである。とりわけ教団の組織確立者であり、教団の海外布教の推進者であった教祖を深く尊敬していた。ただし、これは教団への盲目的な服従心とことなり、その後の教祖たちについては批判的であった。特集技能者の成長過程は、家族という親族的論理と、特殊技能であるがゆえに家族の親族的論理の枠を超えた社会集団の論理(宗教団体、茶道や華道団体、学問や大学組織、企業、スポーツ界)がかかわる。職業的社会集団は、フランスではデュルケーム社会学が個人を越えた独自の存在として重視した社会集団である。家族/職業的社会集団という異なる2種の社会原理の相克と補完関係についてのよい事例が得られた。他方嶋田は、この2組織原理にくわえて、地縁原理の重要さを指摘し、家族、職業的社会集団、地縁社会という、3つの原理がどのようにかみあっているのかを考察した。この3原理は、世界の諸社会・諸文化の比較研究のうえにも役立つことが、嶋田の研究しているアフリカ社会の考察でも明らかになった。部族主義の伝統のあるアフリカでは、家族親族集団が部族あるいはその下位単位のリニージにまで広がる。他方、イスラムなどの世界宗教が広がる地域では、宗教的アイデンテティが第4の要素として巨大化する。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 図書 (1件)
地球人類学ノート
巻: 1 ページ: 5-8
ヨーロッパ基層文化ノート
巻: 3 ページ: 1-20
Contemporary Perspectives on Moral Economy, Africa and South East Asia, (S.Maghimbi, I.N.Kimambo, K.Sugimuraeds)(Dar es Salaam University. Press)
ページ: 123-132