自然放射線源による被ばく線量のうち、ラドンによる被ばくはかなりの割合を占めることは世界共通の認識である。とりわけ屋内環境のラドンに関しては、制御可能な線源として考えられており、欧米ではラドン濃度に関して規制値が設定されている。しかしながら被ばくの直接の原因となるのはラドンではなく、ラドンが壊変してできるラドン子孫核種(固体粒子として存在)である。すなわち、ラドンガスを吸入しても大部分が即座に呼気で排出されるのに対して、固体粒子は吸入するとかなりの割合で呼吸気道に沈着するためである。また、ラドンと同様に環境中に存在しているトロンに関しては、今まであまり知見がなかった。トロンに関しても、トロンガスそのものよりもトロン子孫核種濃度が被ばく評価にとって重要である。このようにラドン・トロン子孫核種は、被ばくの直接の原因となる物質であるものの、それらを直接測定することはラドン・トロンの測定に比べて技術的に難しかった。 本研究において平成21年度は、約4ヶ月という短期の研究期間であったが、2ヶ所の高ラドン地域(群馬県及び広島県)におけるラドン濃度・ラドン子孫核種濃度等の予備調査を行うとともに、トロン子孫核種の測定法について検討を行った。小型でラドン・トロン子孫核種の両方を測定できる装置を検討中である。さらには、今までに本外国人特別研究員が取得した関連データ(ラドン、トロン、及びそれらの子孫核種)を整理し、論文としてまとめた。これらは。平成22年度に学会発表、及び論文投稿を行う予定である。
|