自然放射線源による被ばく線量のうち、ラドンによる被ばくはかなりの割合を占めることは世界共通の認識である。とりわけ屋内環境のラドンに関しては、制御可能な線源として考えられており、欧米ではラドン濃度に関して規制値が設定されている。しかしながら被ばくの直接の原因となるのはラドンではなく、ラドンが壊変してできるラドン子孫核種(固体粒子として存在)である。すなわち、ラドンガスを吸入しても大部分が即座に呼気で排出されるのに対して、固体粒子は吸入するとかなりの割合で呼吸気道に沈着するためである。また、ラドンと同様に環境中に存在しているトロンに関しては、今まであまり知見がなかった。トロンに関しても、トロンガスそのものよりもトロン子孫核種濃度が被ばく評価にとって重要である。このようにラドン・トロン子孫核種は、被ばくの直接の原因となる物質であるものの、それらを直接測定することはラドン・トロンの測定に比べて技術的に難しかった。 本研究においては、ラドン・トロンの子孫核種を直接測定する方法を開発することを目的としている。平成22年度は、トロン子孫核種の測定法について検討を行い、小型でラドン・トロン子孫核種の両方を測定できる装置を試作した。また試作した装置、及び従来から使用していたラドン・トロン測定器をハンガリーのマンガン鉱山や職場環境に設置し、測定を行った。さらに、それらの測定結果に基づいて線量評価を行い、線量評価の不確かさに関しても検討を行った。これらの内容に関連して、平成22年度中に学会発表7件、論文発表4件の成果発表を行うことができた。
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