強誘電体メモリ(FeRAM)は、現在コンピュータのメインメモリとして使用されているDRAM並みの高速動作と、電源を切っても情報が保持される不揮発性を併せ持つ"究極のメモリ"として開発された。FeRAMは日本のメーカーが世界に先駆けて商品化し、JRのスイカ等に幅広く使われている。しかし、FeRAMを高密度化し、コンピュータのメインメモリとするためには、優れた強誘電性をもつ新物質の探索と、その物質の信頼性確保が不可欠である。 本研究は、エピタキシャルのモデルサンプルを用いることで、新物質の探索とその信頼性確保を行おうとする野心的な研究である。 2年目の今年度は、昨年に引き続いて、Pb(Zr_<0.35>Ti_<0.65>)O_3-Bi(Zn_<1/2>Ti_<1/2>)O_3エピタキシャル膜の作製を行った。エピタキシャル膜について詳細な結晶構造解析を行った結果、膜の自歪み(aとc軸の格子定数をそれぞれaおよびcとしたときのc/a比)は、Bi(Zn_<1/2>Ti_<1/2>)O_3固溶量の増加に伴って連続的に減少しており、これが自発分極が低下する原因であることを突き止めた。この結果は、PbTiO_3にBi(Zn_<1/2>Ti_<1/2>)O_3を固溶させた場合と異なっていることが明らかになった。 環境に配慮した非鉛の材料探索にも着手した。具体的には、強誘電体のBaTiO_3にBi(Mg_<1/2>Ti_<1/2>)O_3を固溶させた膜の研究を開始した。パルスレーザー堆積法を用いて(100)SrRuO_3//(100)SrTiO_3基板上にエピタキシャル膜の作製を開始した。
|