研究概要 |
平成21年度は,ポリイソプレン(PI)と、ポリ(4-tert-ブチルスチレン)(PtBS)のブレンド系に対し、各成分のバルク状態での絡み合い長aのデータに基づいて、ブレンド系中のaに対する混合則を検証し、さらに、絡み合いダイナミクスを検討した。具体的には、PIとPtBSからなるブレンド系について動的粘弾性測定と動的誘電緩和測定を行い、その結果を用いてブレンド系のaに対する混合則を検証し、さらに、ブレンド系中での各成分の運動性の違いについて考察した。PI/PtBSブレンド系の持つ特徴は以下の通りである:(1)成分のバルク系でのaが大きく異なるため、混合則の検証に適している。(2)LCST型の相挙動を示し、幅広い温度域で相溶である。(3)PIは主鎖骨格に平行なA型電気双極子を持つがPtBSは持たないため、誘電緩和測定においてPIの大規模運動のみが選択的に測定される。 低温では,PI鎖とPtBS鎖のセグメント摩擦係数ζs, PI, ζs, PtBSがζs, PI<<ζs, PtBSとなるため、PI鎖の絡み合い長aにわたるRouse緩和および終端緩和は、同じ長さaにわたるPtBS鎖のRouse緩和を律速として進行すると考えた。この考えに基づけば、PI鎖は高周波数域でG'の絡み合い平坦部を示さず、PtBS鎖のRouse緩和に追随したベキ乗型モード分布(G'~ω^1/2)を示した後に直ちに終端緩和に至ると予想される。一方、高温ではζs, PI\とζs, PtBSの差が減少するため、PI鎖の終端緩和はPtBS鎖のRouse緩和より遅くなり、PI鎖の絡み合い長aにわたるRouse緩和と終端緩和の間に時間的遅れが発生すると考えた。この時間的遅れは、終端緩和モード群とRouse緩和モード群の間の時間域における緩和強度を減少させ、その結果、高周波数域におけるG'の絡み合い平坦部の発現をもたらすと予想される。実際にブレンド系の粘弾性データはこれらの予想通りの挙動を示し、上記の考えが妥当であることが確認された。
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