本研究課題は神経系を構成する細胞数の少なさに着目し、ホヤ幼生に存在するニューロンの機能、特に遊泳運動に関するニューロンの機能を解明することを目標にしている。本年度はホヤ幼生の遊泳運動に関する神経回路網の解析とニューロンの機能解析を目的としたGa14-UASシステムの構築、遊泳運動に関与するニューロンの分化メカニズムの解析を行った。 ホヤ幼生の各種神経伝達物質作動性ニューロンにおいて、蛍光タンパク質Kaedeを発現するトランスジェニック系統を作製した。これらのトランスジェニック系統を用いて、GABA/グリシン、コリン作動性ニューロンにより構成される神経回路の解析を行い、ホヤ幼生の尾部運動が10個のコリン作動性ニューロンと4個のGABA/グリシン作動性ニューロンにより生み出されることを明らかにした。 各種神経伝達物質作動性ニューロンでGa14を発現するトランスジェニック系統を作製した。ニューロンの機能を阻害するテタヌス毒素、光によりニューロンの機能を興奮させることができるチャネルロドプシン、ChR2とは異なる波長絵でニューロンの活動を抑制することができるハロロドプシン(NpHR)、細胞死を誘導するBaxを発現するUAS系統の作製を開始した。来年度はこれらの外来遺伝子を発現する系統とGa14系統を掛け合わせ、ニューロンの機能解析を行う予定である。 特定のニューロンで発現する転写因子の単離と機能解析を行い、ドーパミンニューロンの分化に必須の転写因子を同定した。来年度はドーパミンニューロンを欠損した個体の遊泳運動解析を行い、遊泳運動におけるドーパミン作動性ニューロンの機能を解析する予定である。
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